立命館大学名誉教授 二宮 周平 さま

面会交流は、子どもと別居親が交流することです。父母が別居・離婚しても、子にとっては父母であることに変わりはありません。別居していても、親が自分のことを気にかけていること、関わろうとしていることを肌身に感じ、自己肯定感や自尊感情を育む機会となります。

しかし、厚労省の「全国ひとり親世帯等調査結果報告」(2021.11)によれば、離婚母子世帯2,653の内、離婚に際して面会交流の取決めをしている世帯は33.7%です。現在も面会交流を実施している世帯は32.7%です。約7割の子どもたちが、この大切な機会について取決めがなされず、また、約7割の子どもたちが面会交流を継続できていません。

取決めていない理由の第1位は「相手と関わりたくない」26.4%、実施していない理由の第1位は「相手が面会交流を求めてこない」28.5%です。どちらも親の都合です。どうすれば、夫婦の問題と親子の問題を切り分けて、子どもへの配慮を優先する視点に転換できるのでしょうか。

私は法学者なので、法制度や権利を中心に物事を考えます。面会交流に関しては、1989年に全会一致で採択された国連子どもの権利条約7条が基本です。「児童は……できる限りその父母を知り、かつその父母によって養育される権利を有する」と定めます。この条文に基づいて、子には別居親と面会交流する権利があり、父母には子の権利を実現する責任があるのです。

しかし、権利と責任が明記されていれば、誰でも実行できるほど、家族関係は単純ではありません。父母が別居・離婚に至る過程で信頼関係や協力関係を失った場合、面会交流の実施が困難になることがあります。こうした場合にその実施を援助する専門の第三者機関が各地で活動を始めています。びじっとは、これらの面会交流支援団体の中で最も信頼できる団体の一つです。びじっとの理念は「10年先の子どもの未来を見据え 今を支援する」、びじっとの行動指針は「面会交流が当たり前の社会を目指して」です。実は私の年来の主張と同じだからです。ぜひ、びじっとのHPを丁寧に読んでみてください。

立命館大学名誉教授 二宮 周平 さま
1951年5月27日、横浜で生まれ、のち、四国松山で育つ。
専攻は家族法。大阪大学大学院修了後、松山商科大学講師、助教授を経て、1985年より立命館大学法学部に移籍。2017年3月、定年退職、2022年3月、再雇用終了、4月より、立命館大学法科大学院授業担当講師。肩書は名誉教授、法学博士(大阪大学)。
ジェンダー法学会理事長(2012年~2014年)、日本離婚再婚家族と子ども研究学会会長(2021年~現在)、一般社団法人面会交流支援全国協会代表理事(2019年~現在)。
主な著作:『家族法〔第5版〕』(新世社)、『多様化する家族と法Ⅰ、Ⅱ』(朝陽会)、『子どもの権利保障と親の離婚』(信山社)、『離婚紛争の合意による解決と子の意思の尊重』(日本加除出版)、『面会交流支援の方法と課題』(法律文化社)など。