子どもの気持ち

子ども「に」話を聞くのではなく、子ども「の」話を聞きましょう

親子交流(面会交流)中や交流後、親はついつい、子どもに話を聞いてしまいがちです。
別居親は「学校ではどんなことをしているの?」「今日のあさごはんは何を食べたの?」と、同居親は交流後に「どんなことをして遊んだの?」「別居親はどんなことを言ってた?」と聞きたくなってしまいます。

そう聞かれると、子どもは「詮索されている」ような気持ちになってしまいます。人はだれしも、「詮索されている」と感じたら、嫌な気持ちになるものです。

子どもは、「別に」「普通」などと答え、やんわりと答えることを拒否することもあります。あるいは、無意識に親の望む答えを、例えば同居親には「親子交流全然楽しくなかったよ」、別居親には「家のごはんはおいしくないんだ」などと答えるかもしれません。
逆に、親をかばおうとして「親子交流すごく楽しかったよ!」「家では何の問題もないよ」と答えることもあります。

これら全てが本心ではないとは言いませんが、子どもが「詮索されている」と感じてしまうと、自分を守ろう、親を守ろうとして、本心ではない気持ちを伝えることがあります。

子育てに成功も失敗もありませんが、「困ったときには人に相談するスキルを身に着ける」ことは一つのゴールと設定できます。子どもが困ったときは安心して親に相談できるように、「詮索されている」と感じさせることのないように気をつけたいものです。

安心して子どもが話せるように

子どもが安心して話せるようになるには、子ども「に」話を聞くのではなく、子ども「の」話を聞く必要があります。

こども「の」話を聞くために、どうすれば良いでしょうか。
親子間で行うときには、特別なトレーニングやスキルは必要ありません。

子どもの話を、さえぎらずに聞く

「さえぎらずに聞く」ことは、簡単に見えて案外難しいものです。でも、「子どもが話し終わった」と感じるまで、かんたんなあいづちを打ちながら、聞いてください。

適切なあいづちがあると、子どもは「もっと話して良いんだ」と感じます。「うん、うん」「そうなんだ」と、肯定的なあいづちを入れられると良いですね。

まずは、子どもが話し終わったと感じるまでさえぎらずに聞いてください。

子どもの話を「肯定」も「否定」もせずに、共感を持って聞く

話をしているうちに、親として「その行動は良くない」「そういう感情を持つのは正しくないことだ」と感じることがあります。たしなめたり、諭したりする必要を感じることもあるかもしれません。

子どもが「好ましくない言動」をしていると感じても、「肯定」も「否定」もせず、共感を持って聞いてください。

子ども「の」話を十分に聞く目的は、「子どもが安心して話せる環境」をつくり、「困ったときにヘルプが出せるようにする」ことです。子どもの言動に対して、「正しい」「間違っている」というメッセージを伝える必要は、話を聞く段階では必要ありません。
「あなたはそう思ったんだね」「そういう行動をとったんだね」と共感を伝えてください。

気持ちのモヤモヤを言語化する

たとえば、小さい子どもが転んで「うわーん!」と泣き出したときに、近くの大人が「びっくりしたね」「痛かったかな?」とその子の気持ちを言語化してあげるだけで落ち着くことがあります。

子どもは、マイナスの気持ちをうまく伝えられずに、イライラやモヤモヤを抱えていることがあります。中には、マイナスの感情を持つことさえ悪いことだと感じ、感情のフタをしていることもあります。
ですが、感情にフタをしている状態では、その気持ちはいつまでも心の中にわだかまり、いつまでも昇華していくことがありません。

親子交流という普段と違う状況の中で、子どもは不安や期待、怒りや混乱をかかえていることがあります。それを親にどう伝えたら良いかわからず、モヤモヤをかかえている子どもの気持ちを、仮定でかまわないので「言語化」を試みてください。

親子といえども、気持ちが完全に通じ合うことはありえません。間違っていてもかまいません。「不安なのかな?」「ドキドキするよね」と声をかけられると子どもは、「親は私の気持ちをわかろうとしてくれているのだ」と感じ、マイナスの気持ちを伝えても大丈夫なのだと安心します。

久しぶりの交流で話がしづらそうだったら、「久しぶりだから何を話したら良いのかわからないね」と伝えてみるのも良いかもしれません。

子どもに「ありがとう」「ごめんね」と言ってみる

「うちの子は、ありがとうとごめんなさいが言えません」という悩みを聞くことがあります。子どもは、親の言う通りには育たないものです。ですが、親の行いを同じようにするものです。

親が、子どもに「ありがとう」「ごめんなさい」と言ってみてください。

「子どもにそれを伝えるシーンがありません」と言われることがあります。シーンは、見つけ出してください。

子どもと歩いていて、ちょっと肩がぶつかったときに「ごめんね」と伝えてみてください。仕方のない理由で約束を守れなかったとき、買うと約束したものを買い忘れたとき、子どもに勘違いで怒ってしまったときに、「ごめんね」と伝えてください。怒りすぎてしまった、と感じたときに「ちょっと言い過ぎたね、ごめんね」と伝えてください。

親子交流のときに、会いに来てくれた子どもに「来てくれてありがとう」と伝えてください。
交流から帰ってきた子どもに「今日は親子交流に行けて良かったね」と笑顔で迎えてください。

「感謝」と「謝罪」の気持ちを子どもに伝えることは、親の威厳を損なう行為ではありません。子どもは、率直に「感謝」と「謝罪」を伝える親を良いモデルととらえ、子ども自身が「感謝」と「謝罪」を伝えられるようになります。

親は、迷って、間違えて良い

子育てに、正解はありません。
子どもが、一人一人感じ方、考え方が違うように、親も一人一人違います。
子どもの気持ちになって考え、「こうすれば良いだろう」と考え、でもやってみてもうまくいかない。
それは、当たり前のことです。
子育ては、「トライ&エラー」です。

迷い、間違える親が悪い親なのではありません。迷いながらも、常に少しでも子どもの気持ちに近づこうという姿勢を子どもに見せられる親が素晴らしい親だとびじっとは考えています。

葛藤・紛争の中にあるお父さんお母さんに

男女間の葛藤を解決するのは難しいことです。双方の感情が糸のように絡まりあい、どこから始まったのか、どこで終わりにすれば良いかもわからないものです。

ただ一つ、間違いがないのは、紛争がある間は、当事者は苦しみ続けるということです。
当事者の間にはさまれる形になる子どもにも悪影響を及ぼすことがあります。

父母間の争いについて、なるべく子どもが関わることがないよう、配慮をお願いします。
親子交流は、離婚や別居の原因、相手の振る舞いにから引き起こされる自分の感情をいったん横において、「子どもが楽しく過ごせる親子交流」「子どもが居心地よいと感じられる親子交流」の方法を、考えてみてください。
びじっとからのお願いです。

さいごに・・・

子どもは、親のいう通りには育ちませんが、親のすることを観察し、それをモデルとして育っていきます。

一人の大人として、子どもに「モデル」を見せてください。
まわりの人に丁寧な言葉をつかい、思いやりを持って接してください。
父母で紛争状態にある場合、葛藤を感じるのは当たり前です。考え方や感じ方は、人によって、立場によって違うのは当然のことです。

相手の考えを思いやり、尊重してください。
立場の違う相手に対して敬意をもって接する姿勢を、子どもは見ています。

子どもの気持ちによりそい、子どもが無理せず「居心地が良い」と感じられる親子交流の時間にしてください。