お父さんお母さんへ

親子交流(面会交流)って本当に子どものためになるの?

子どもの気持ち

子どもは、本能的に「自分はお父さんとお母さんの半分からできている」と理解しています。たとえ年齢が小さくても、親を「自分の分身」だと考えています。そのため、父母の離別後、会えなくなった一方の親のことを気にかけ、「元気にしているだろうか」と気にかけます。

年齢や性格によって、きちんと言語化できる子どもとできない子どもがいますが、無意識化では必ずそれを理解しています。親を自分の分身だと考えているため、一方が一方の悪口を言うと、「自分が責められている」ような気持ちになります。

子どもはお父さんとお母さんに期待している

子どもは状況によっては、お父さんやお母さんのことが、絶対に100%大好きと言い切れないこともあります。夫婦ケンカや、親同士の悪口の言い合いを見てしまうと、お父さん嫌い!お母さん嫌い!と口に出して言う子どももいるでしょう。

でも、本当に親を嫌いになりたい子どもなんて、この世に一人もいません。子どもはみんな、「お父さんもお母さんも大好き!」と胸を張って言いたいのです。自分はお父さんにもお母さんにも愛されていることに自信を持っている子どもは、「お父さんもお母さんも大好き!」と言います。

なんで親子交流が必要なの?

離婚をして、夫婦の関係が切れたとしても、親子の関係は切れません。また、子どもと離れて暮らす親の、親の責任がなくなるわけではありません。

別離した親の責任は、主に二つです。一つは、経済的に子どもを支える。これは、養育費を支払うことで、責任を果たすことができます。二つ目は、親の存在と愛情を、子どもに実感させることです。養育費はあくまで親の間のお金のやりとりなので、子どもは親の存在と愛情を実感することは難しいです。

子どもは、実際に会って、一緒に遊ぶ、出かける、食事をする、お風呂に入るなど、「存在」を実感することで、「愛情」を実感します。自分は親に愛されているんだ、という実感が、子どもの自己肯定感とレジリエンスを大きく育て、子どもはしやかなにたくましく成長することができます。

こんな親、子どもに必要ないのでは・・・?

親子交流をためらっている同居親のみなさんは、このように感じていることが多いです。
では、もし親子交流をしなかったとしたら、子どもはどんな気持ちになるでしょうか。

まず、「親は私のことなんてどうでも良いと思っているんだ」と思います。気になったら、会いたい、顔を見たいと思うはずなのに、それをしないということは、親にとって自分はどうでも良いのだと思い、自分には価値がないと思います。

その次に、二つの可能性があります。「会えないけどどこかにいる親」に対して、過剰な期待を抱くことがあります。お父さんが近くにいたら、例えば、もっとお小遣いくれるはず、もっと優しくしてくれるはず、とありえない幻想を持つこともあります。そうすると、苦しい現実は全て今の状況のせいと思い込み、現実を直視し、立ち向かう力が養われません。

逆に、「我が子に会いたいと思わないなんて、冷酷で最低な人間に違いない」と思い込むこともあります。こういう子どもは得てして、「自分にもそういう血が流れているのだ」と思い、絶望することもあります。「現実の親」と接していないため、極端な親像を作り上げたケースです。

「現実の親」と接し、良いところも悪いところもある、ただの人間だと知ることは、子どもの成長に欠かせない大きな一歩です。

どうやって親子交流をしたら良いの?

①ルールを決める

親子交流をやることに決まっても、その日程や時間を毎回父母で話し合ってきめるのは、とても大変です。離婚を得て、お父さんお母さん双方に葛藤や喪失感があることでしょう。

毎回話し合うことをせずに済むように、日時、時間などをあらかじめ決めておくと、毎回のやりとりが少なくて済みます。

両親のコミュニケーションが難しい場合は、最低限、これぐらいを決めておくと、スムーズです。
・交流頻度
・交流時間
・学校行事等への参加の可否
・交流時に別居親からプレゼントを渡すのは良いか。いくらぐらいまでか。
・支援団体を使うか使わないか

ルールについては、子どもの成長に応じて柔軟に対応していくことが望ましいです。また、ルールをきっちり決めると、毎回の決定事項が少なくて済む反面、急な変更に対応することが難しいので、ご家庭の状況に応じ、話合いをして決めていくのが良いでしょう。

また、親子交流においてよく問題になるのが、プレゼントやお小遣いのルールです。なにかを買ってあげたい別居親と、ゲームなどを与えすぎて欲しくない同居親、という構図がよくあるパターンです。高価なプレゼントはお誕生日やクリスマスだけというように決めるご家庭も多いです。

子どもの育ちにどういった形をとるのが良いのか、じっくりお話合い下さい。

もし、お父さんとお母さんの間での直接の話し合いが難しい場合は、下記の方法で話し合いをすることもできます。
ADRの調停で決める(びじっとでも行えます)
・家庭裁判所の調停で決める
・代理人弁護士を依頼する

②やりとりはビジネスライクに

離婚までした間柄なので、複雑な思いがあるのは当然のことです。

ですが、その相手も「子どもの大切な親」です。

親子交流の日程などを決める上で、離婚時のゴタゴタについて持ち出さないことは最低限のルールです。ビジネスライクに事務的に、淡々と日時・場所だけを伝えるのが一番良い方法です。

③約束を守る

親子交流を始めた当初は、信頼関係がゼロどころかマイナスから始めるご家族もたくさんいらっしゃいます。ですが、交流を淡々と行っていくことで、父母間の信頼関係は徐々に回復します。

そのために一番大切なことは、「約束を守る」こと。子どもにも「約束をやぶっちゃダメだよ」というように、大人だって、した約束はきちんと守ることが大切です。

一度損なわれた信頼関係だって回復できるということを、子どもが身をもって体験できる大きなチャンスです。良いお手本になってください。

④お互いに敬意をもって接する

「離婚した相手」は、他人であり、同時に、「子どもの大切な親」です。

その関係は、仕事上で付き合う取引先のようなものです。全てが思い通りにはなりません。そのため、譲歩しあう姿勢が大切です。

別居親は、「大切な子どもを預けてくれたこと」に対する、同居親は「子どもを預かってくれたこと」に対する感謝の気持ちを持ち、敬意を持って接してください。

⑤親子交流は子どものために

親子交流は、親の気持ちや自尊心を満足させるために行うのではなく、子どもの健やかな成長のために行うのだという気持ちを常に忘れないでください。親子交流を通じて、子どもが困った立場に追い込まれたり、プレッシャーを与えるようなことは慎んでください。

子どもが困った立場に追い込まれる例は、下記の通りです。
・子どもをメッセンジャーに使う
・子どもを使って、相手の親の行動を探る
・相手の親の悪口を言う
・「どちらの親のほうが好きなの?」と問い詰める

子どもが、純粋に親との交流を楽しめるのが一番です。

離婚のこと、親子交流のこと、子どもにどう伝える?

子どもの考え方

年齢にもよりますが、小学校低学年ぐらいまでの子どもは、「世界は自分を中心に回っている」と考えています。これは、なにも自己中心的であるという意味ではありません。文字通り自分が世界を動かしていると思っています。良いことが起こるのは自分の行動が原因、悪いことが起こるのも自分が原因だと考えているということです。

自分の働きかけによって、良いことが起こると、子どもはどんどん、自然な意味で自信をつけ、世界に対して希望を持ち、基本的信頼感を養います。その中で、「離婚」というネガティブな状況が起きると、子どもは当然のように「自分のせいだ」と思い込みます。また、環境を変えたくないという思いで、「なんとか元に戻せないか」と努力をすることもあります。

まずは、「離婚はあなたのせいではない」ということを伝えてください。そして、「あなたががんばっても、元に戻ることはない」ということも、教えてあげてください。

そして、一番大切なこと、「別々に暮らしても、お父さんもお母さんも、あなたのことをとても大切に思っているよ」ということを、しっかり伝えてください。

離婚のこと、どこまで伝える?

大人でも子どもでも「わからない」というのは、恐怖を産みます。
恐怖は、悪い想像を生み出します。

子どもにわかりやすいように、お父さんとお母さんが別々に暮らすことになる、ということを伝えてください。細かい原因を伝える必要はありません。「一緒にいるとケンカになってしまうから別々に暮らすようにした」程度でかまいません。

子どもの心配は、こういうことが多いです。
・誰と住むの?誰がお世話してくれるの?
・どこに住むの?引越はするの?保育園、幼稚園や学校は?お友達は?
・生活がこれからどうなるの?

なるべく子どもが安心できるように、説明してあげてください。

子どもの話を聞く、でも決めさせない

子どもも、生活が変わることに大きな不安を抱きます。つらい気持ちを誰にも話せないと、大きなストレスがかかり、イライラしたり、急に泣き出したり、乱暴な行動をとったりするかもしれません。

わかっているよ、という共感的な態度で、話を聞いてあげてください。ただし、「子どもに関わることだから、子どもに決めさせる」ことには慎重になる必要があります。決断には、責任が伴います。子どもには、責任をとることができません。

例えば、「お父さんとお母さんと、どっちと一緒に住みたいの?」と子どもが聞かれたら。お父さんと答えれば、お母さんを傷つけるかもしれない、お母さんと答えると、お父さんを否定したことになるかもしれない。

親子交流も同じです。交流をしたいと言えば、一緒に住んでいる親を裏切ったような気持ちになりますし、したくないと言えば、離れて暮らす親を拒否したような気持ちになります。

決断は大人の責任において行い、そして「あなたは言いたいことがあったら言って良いんだよ」と伝えてください。

さいごに

夫婦の関係がうまくいかなくなり、お互いに相手を責めあうようになると、相手を過剰に攻撃してしまうことがあります。これは自分を守ろうという防衛本能から来るもので、避けることは難しい面があります。

また、「全て相手が悪い」「相手の全てが間違っている」と極端な考え方に陥ることもあります。ですが、子どものいる夫婦の場合、「離婚したらサヨウナラ」というわけにはいきません。子どものことで、必ず話し合いを持つ機会があります。

子どもにとって、親の夫婦ケンカに巻き込まれるのはとてもつらいことです。子どものことを第一に考えた場合、双方の関係が完全に悪化してしまう前に、見切りをつけるほうが良いこともあります。

びじっとのADRくりあでは、親子交流に加え、養育費や財産分与についても話し合うことができます。くりあでご相談をお受けしていますので、お困りの場合はぜひご連絡ください。