SAJ(ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン) 緒倉 珠巳 さま

知って頂きたいのは、家族の姿はずっと同じではないということです。年を経て、家族の有り様は変化していきます。

私がうまくいかなかった結婚に諦めをつけ離婚を決断した時、息子はまだ3歳前でした。子どもにとって前夫は唯一の実父。私自身も唯一の実母。諍いが収まらぬ夫婦でいるより、別れた方が夫婦にとって良いのは明白でした。けれど、子供の親として二人が別に暮らしながらそれぞれ親子の関係を継続するにはどうしたらいいのか・・・。当初はとても悩みました。

連絡をとる度に喧嘩になったり、お互いを否定しあったり、子どもを奪われてしまうのではないかと心配をする・・・。離婚後の何年かはそうやって過ぎていきました。面会交流に悩む方の多くが、同じような状況にいるのではないでしょうか。

前夫との関係だけでなく、周囲の反応に傷つくこともありました。子供のために必死で続けている面会を「別れたのに会わせているのは、相手への未練があるからじゃないの」などと言われたこともあります。指針がない中で悩みながら続ける面会交流は、とても辛いものでした。

後に知ったことですが、私が離婚した当時、面会交流を支援してくれる機関が都内に1つだけあったようです。残念ながらその情報は私には届きませんでした。当時びじっとさんがあったら、そして私がその存在を知っていたら、負担はずっと軽かったことでしょう。その頃苦しんだ経験から情報を周知することの大切さを知ったことが、現在私がステップファミリーのサポートを継続する原動力となっています。

辛いことの多かった面会交流ですが、子どもが成長し、親の私たちが新しい関係に慣れると共に、ストレスは軽減されていきました。みなさんも今は辛いな、難しいなと思うことが多々あると思いますが、その苦しみは長くは続きません。不安を感じた時はびじっとのみなさんに相談してください。しっかり受け止め、良いアドバイスをくれるはず。そのためにびじっとは在るのですから。

知って頂きたいのは、家族の姿はずっと同じではないということです。年を経て、家族の有り様は変化していきます。私たち元夫婦はそれぞれに新たなパートナーと再婚し、家庭を築きました。その家庭を息子は楽しそうに行き来しています。あちらでも、こちらでも息子は「お兄ちゃん」と慕われています。「僕には父が二人いる。よその人からみればヘンに見えるかもしれないけれど、僕にはこれが普通」と息子は言います。

私の家族のように、前のパートナーとの子どもを含めて形成する家族をステップファミリーと呼びます。ステップとは「継ぐ」という関係性を表す言葉です。ステップファミリーが成功する鍵は、家族のメンバーそれぞれの「こころのニーズ」を汲み取り、尊重し合うことです。面会交流は、離婚時から継続して配慮の必要な、子どもの「こころのニーズ」の一つです。「こころのニーズ」を満たされると、人はその環境に安心することができ、自分の居場所を得ることができるのです。

これまで、再婚をすると、父と母が1人ずつ、そして子どもがいるという初婚の家族と同じ形となることが当然のように思われてきました。離婚や再婚の増えた現在、この家族像にとらわれ初婚の家族を目指すと大きなストレスが生まれてしまいます。これから離婚や再婚を考える方には、自分の家族をこれまでの経験や常識にとらわれた家族という枠にはめようとするのではなく、それぞれのあり方を大事にしながら個々の関係を丁寧に育み、継いでいく家族を模索して欲しいと願っています。

困った時にはどうぞためらわずに、ご相談くださいね。応援しています。

SAJ(ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン) 緒倉 珠巳さま

1969年生まれ。2001年SAJ設立後まもなくから参加。2010年より代表。
http://www.saj-stepfamily.org
シングルマザーを6年経験後再婚。二児の母。
ステップファミリーのためのサポートグループLEAVESを2002年より東北・関東・東海・関西で開催中。研究者と恊働しステップファミリーに特化したセミナーの実施、専門著書の執筆など活動中。
共著書:Q&Aステップファミリーの基礎知識 ― 子連れ再婚家族と支援者のために [明石書店] 野沢 慎司 (著), 茨木 尚子 (著), 早野 俊明 (著), SAJ (著)