九州大学教授 入江 秀晃 さま

こんにちは。大学教員・研究者をしています入江秀晃と申します。

面会交流は、日本社会の中でずいぶん拡がっています。ドラマや小説の中にも取り上げられるものも増えてきましたね。

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わたしが思うに、日本の家族モデルがバージョンアップを迎えつつあります。バージョンアップでは、変わる必要がない部分と、変わる必要がある部分に分かれます。

変わる必要がない部分は、家族は互いに協力し助け合うとか、先祖・祖先や子孫を含めて長期目線で考えていくといった基本的な考え方や機能です。日本人にとっての本質的な美意識に紐付いた価値観と言っても良いかもしれません。

変わる必要がある部分は、家族の課題は家族内だけで閉鎖的に解決すべきであるとか、メンバーぞれぞれに固定的な役割があるべきという思い込みです。閉じこもって歯を食いしばってという昭和時代の努力物語にも価値がないとは言いません。

しかし、自分が受けてきた理不尽をあなたも受け入れなければいけないと言ってくる人の話は聞く必要はありません。むしろ未来のためにも聞くべきではありません。

だからといって古いすべての縁を切り捨てれば良いわけではないでしょう。現実は、高齢化社会でもあり、古い家族モデルこそが良いという考え方にも根強いものがあります。

だからこそ、たとえば離婚の局面では、古い考え方にとらわれた人とは距離を取ることが必要です。

離婚後の夫婦が、それぞれ子どもの親としての役割を継続するするために、元配偶者と最低限度のビジネスライクなつきあいを保つというのは、以前の日本社会では少なかった姿でしょう。

しかし、子どもが地域社会の様々な大人たちによって育てられていた時代は日本においてむしろ長かったはずです。歴史的に見れば、核家族が何もかも抱え込むべきという考えの方が特殊だったはずです。現代は、新しい形で社会化された子育てのモデルが徐々に構築されている途中にあるとわたしは考えます。

人にはそれぞれの正義があります。相手次第では、きちんと距離を取らないとふりまわされてしまいます。自分の工夫や努力だけではなかなか思うように距離が取れないとき、面会交流支援団体は(特に、ADRを付設する団体は)、心強い仲間になってくれます。

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びじっとさんが切り開いた、当事者性のある支援活動は、日本社会の中で確実に拡がっています。

わたしはここに希望を見ます。

面会交流支援のような対人支援には、科学に基づく専門性も大切ですが、当事者が抱えている闇の深さへの想像力こそが本質的に必要だと思うからです。そこでは、官僚的でなく、当事者性を持った、生きた活動こそが大切になるからです。

わたしは、将来の日本社会において、そのような面会交流支援のサービスが社会のインフラとして全国各地でも気軽に利用できるべきだと考えています。

来たるべき未来のために、粘り強く、共に長期戦を闘っていきましょう。

これからもよろしくお願いいたします。

九州大学教授 入江 秀晃 さま
九州大学大学院法学研究院・法科大学院 教授
1969年生まれ 妻1人、子2人
調停・ADRについての制度研究と共に、調停の実践的な進め方についての研究を行っている。調停技法研修は、弁護士会、司法書士会などをはじめとして多数の機関で長年実施している。
仲裁ADR法学会常務理事、日本ADR協会調査企画委員、第二東京弁護士会あっせん人候補者、京都国際調停センター運営委員・手続候補者など。